生まれたばかりの赤ちゃんが、退院するまでの検査で黄疸の検査に引っかかったという方。
無事に生まれてきてくれたと思っていたのに、「黄疸って何?」「それって大丈夫なの?」と不安になりますよね。
今回は新生児の黄疸について紹介していきたいと思います。
新生児の黄疸とは何か?

「黄疸」ってどんなものなのでしょうか?
- 「黄疸」とは血液中にビリルビンという物質が増加して全身が黄色っぽくなる症状で目が黄色になることもあります。
- 皮膚や粘膜、白目の部分が黄色っぽくなります。
- ほとんどの赤ちゃんで黄疸は見られますが、肝臓の病気や大量の出血などで黄疸が出ることもあるので、自然(生理的)な黄疸か病的な黄疸かを区別することが重要となってきます。
- 黄疸の程度が強いと脳に影響を与える可能性もあるため慎重にみていく必要があります。
ビリルビンって何?

黄疸は血液中のビリルビン量でその程度を判定していきます。ビリルビン量が高値だと治療の必要があります。
ではこの「ビリルビン」とは何なのでしょうか?
もともと胎児は肺が未熟であり、酸素運搬量を増やすため赤血球が多い傾向にあります。しかし、出生後、肺が発達してくると赤血球過多となり、余分な赤血球は脾臓で破壊されます。ビリルビンは、赤血球が破壊されるときに出てくるヘモグロビンという物質を処理する際に作られます。
通常ビリルビンは肝臓で処理され腎臓から排泄されますが、赤ちゃんは肝臓も未熟であるため、処理しきれなかったビリルビンが体内に残り、ビリルビン値が高くなってしまうのです。
黄疸の種類は?いつからいつまで続く?

黄疸には以下のような種類があります。
- 生理的黄疸:これは約9割の赤ちゃんに現れます。肝臓が未熟な新生児が多量につくられたビリルビンを処理しきれず、ビリルビンが体内に残り黄疸が現れます。生後2?4日ごろから黄疸が現れ、1週間をピークに、2週間ほどで消失します。
- 母児間血液型不適合黄疸:母と子の血液型が異なる場合、抗原抗体反応によって赤ちゃんの赤血球が破壊され、強い黄疸が起こることがあります。これは出生直後から起こります。
- 母乳性黄疸:母乳には肝臓の酵素の働きを抑制する作用があります。そのため、ビリルビンの処理を遅らせてしまう作用があります。母乳からくる黄疸を母乳性黄疸といい、生後2週間以上続くことがあります。
危険な黄疸とは?

黄疸がひどくなると脳の障害や肝硬変など重篤な病気へと進行する恐れがあります。そのため、生後から黄疸の値に注意していき、値が高めであれば早めに治療を行っていく必要があります。
- 核黄疸:新生児は血液脳関門ができあがっていないので、ビリルビンが高値だと脳まで届き、脳神経細胞に沈着して脳性麻痺や聴覚障害を起こします。これを「核黄疸」といいます。血液脳関門は生後10日目以降は成熟するので、ビリルビンは血液脳関門を通過できなくなり、核黄疸の起こるおそれはなくなると言われています。検査でビリルビン値が高かった場合は光線療法などを行いビリルビン値を下げ、この核黄疸の予防につとめていきます。
- 胆道閉鎖症:新生児期より黄疸を来す病気で、早く手術を受けなければ肝硬変へ進行するため、早期発見が重要となります。黄疸、淡黄色便、黄色尿が主な症状です。
黄疸の検査

生後1日目?6日目に採血検査で調べる病院が多いようですが、検査方法としては以下の方法があります。
- 経皮的ビリルビン測定法:ミノルタ黄疸計などを用いて、赤ちゃんの皮膚の上から測定します。
- 血清総ビリルビン測定法:赤ちゃんの耳や足の裏から採血をして、血液中の総ビリルビン値を測定します。
経皮ビリルビン濃度測定法の場合は、黄疸の強さが数値で表されます。黄疸が強そうな場合は採血をして血清ビリルビン量をチェックします。
生理的黄疸の場合、ビリルビン値は15mg/dlまでは正常で、
特に注意が必要な2500g以下の低出生体重児で12mg/dlです。
黄疸の治療法

- 光線療法:ビリルビンは光を当てると水溶性に変わり、尿や胆汁に排泄されやすくなため、赤ちゃんに人工的な紫外線を当てる治療法です。赤ちゃんを裸にしてアイマスクを付けて保育器の中で青白色光や緑色光の蛍光灯の光を当てる方法や、寝ている赤ちゃんの背中(下着と服の間)に光線シートを24時間入れておく方法などがあります。
- 交換輸血:血中の抗体及び、抗体と結合した赤血球を交換することによって根治的に母児間血液型不適合黄疸などの重症黄疸を治療します。また、光線療法で軽快しない場合にも行われます。橈骨動脈に留置カテーテルを挿入しそこから瀉血して全血の2倍の交換血液を抹消静脈に注入し交換輸血を実施します。輸血による感染症などのリスクがまったくないわけではありませんが、核黄疸による後遺症を防ぐためには必要な治療です。
- ガンマグロブリン大量点滴療法:交換輸血と同程度の効果があり、交換輸血の頻度は大幅に減少しています。赤血球に抗原抗体反応で結合したIgG抗体のFC部分が脾臓や肝臓の細胞にあるFCレセプターと結合して血管外溶血を起こします。そのため、大量のガンマグロブリンを点滴静中する事で、このFCレセプターに前もって結合させて、抗体と結合した赤血球がFCレセプターに結合するのをブロックして溶血を防ぐという治療法です。
赤ちゃんのためにママができること

黄疸の値(ビリルビン値)が高いとママは不安でたまらなくなりますよね。赤ちゃんのためにママができることはどんなことでしょうか?
- 赤ちゃんの哺乳力に余裕がある場合には、哺乳量をふやして循環血液量を増加させるとともに、おしっこの量も増加させる。これによってビリルビンの排出を促し、多少とも黄疸の軽減が期待できます。
- 窓ぎわなどの明るい場所に赤ちゃんを置くことでも黄疸の軽減が期待できますが、赤ちゃんは紫外線に対する抵抗力も未熟であるため、ビリルビン値を見ながらまずは光線療法など医師と相談しながら行ってみましょう。
- ビリルビンが高いと聞くと不安ですが、ビリルビン高値を指摘されても、多くの赤ちゃんは光線療法によりビリルビンが下がっていきます。治療中の姿を見るのはつらいですが、赤ちゃんを信じて待ちましょう。